Otto Vol.18
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すごいですけど」「ジュンに聞いたの? が心臓だったから不安が大きかったけど、たまたまここの常連さんの中に名医がいてね。おかげで術後17年間なんともなし!」「くれぐれも油断しないでご自愛を」「ありがとね」「ところであの絵です。人が舌を出しているユニークな絵。店のあちこちに飾られていますが、あれは何ですか?」「知らない? べらぼう凧。古くから能代に伝わる凧で、うちの店名もそこからもらったの」カウンターの奥から身を乗り出し、ジュンさんも会話に参加する。「俺が子どもの頃、学校の授業でべらぼう凧を作る機会があって」「その日、家に帰ってきて言ったのよね。父さんと母さんが始めるお店の名前、べらぼうがいいんじゃない?って」「そうそう。あの授業がなかったら、 たぶん言ってなかったと思う」元来、縁起物として珍重されてきたべらぼう凧。凧には男べらぼうと女べらぼうがあり、ふたつを対にして初めてご利益を授かれるという説もあるらしい。それを踏まえると職人肌のマスターと経営上手な女将さんが二人三脚で育て上げ、連日多くの人が詰めかけるようになった店の名として、べらぼう以上のものはないように思えた。6     悪くなった場所つもならお会計をお願いする頃合いだけど、何をオーダーしても美味しか出てこないメニュー、べらぼう一家が作り出す幸せな空気が、もう少しいたいという気持ちにさせる。「全国を探しても、こんな店とはなかなか出会えないですよ。自分は初めて訪問したときから心をわしづかみにされて、かれこれ10年近く関東から通っています。年に2、3回は必ず来ますよ」分かるなあ。果たして私はどれくらいのペースで、ここに通うことになるだろう。気がつけば、来店してから3時間。いとは、とある常連さんの言葉。すごくさけ酒どこ べらぼう秋田県能代市柳町2-39☎0185-54-4066 18:00-23:00 営 月曜休L e c k e r !

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