Otto Vol.2
5/36

格のある50〜60代の男性が立っていた。「お久しぶりです」と店主。「1年ぶりですね」と予約客。「1年間、何があったんですか!」今振り返ると自分でもずいぶん思いきったことをしたと思うのだが、気づくと私は、初見の相手に躊躇なく語りかけていた。人と人の物理的な距離が近い店の造りがそうさせたのか、人と人の心の距離が近いと感じさせる店のそう言って、カウンターの奥から顔をのぞかせる店主。「ビートルズの中で誰が一番好きですか?」「ジョージです」「お、渋い!たジョン・レノンが好きです。彼が「世界を平和にしよう」とメッセージを送り続けていた時代は、本当にいい時代だったと思いますね」遠い目で語る店主。カウンターの隅に置かれた書籍やアルバムジャケットをよくよく確認すると……なるほど。ここで初めて私は、この店がビートルズをコンセプトにしていると理解した。「思いきって入ってよかったです」「あれ?来たんじゃないんですか?」「たまたま朝の散歩の途中に見つけて、佇まいに惹かれて来ました。すみません、予備知識はゼロでした」「あはは!だけどよく入って来てくれましたね、店の雰囲気や客層も分からないのに。あ、いらっしゃい!」店主が声をかけた方に目をやると、風私は、最後まで純真だっインターネットで検索してお客さん面白い人ですね。03 ◆       

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る